インタビュー
- 総合メディアセンター 事務部長 高橋 陽子 様
- 総合メディアセンター 課長 加藤 貴仁 様
- 総合メディアセンター 兼 インスティテューショナルリサーチセンター 松本 賢治 様
会社概要
- 業種 :教育、学習支援
- 導入サービス:BEDORE Conversation for Workplace
- 導入目的 :問い合わせ対応の自動化、ユーザの満足度向上
課題
- 急激な問い合わせ件数の増加による担当者の工数逼迫
- コロナ禍で受付体制が変わり、時間外の問い合わせにタイムリーに回答ができない
効果
- 定型の単純な問い合わせが大幅削減
- チャットボット→個別問い合わせのフローが確立
- 1ヶ月でAIチャットボット利用率が月間 600件から4,300件 に急増
- ユーザの潜在的なニーズやリアルな声を拾うツールとして活用
大学、ご担当者様の紹介
ー 貴学の概要について教えてください。
本学は1907年に東京・神田に創立された電機学校が前身です。1949年に新制大学として「東京電機大学」が設立されました。東京千住キャンパスにシステムデザイン工学部、未来科学部、工学部、工学部第二部の4つの学部、埼玉鳩山キャンパスに理工学部、また大学院に5つの研究科を設置し、約1万名の学生を擁する理工系総合大学です。
建学の精神「実学尊重」、教育・研究理念「技術は人なり」のもと「技術で社会に貢献する人材の育成」を使命として、時代の変化に柔軟に適応しながら、技術を通して人や社会の未来に貢献できる人材を育成しています。
ー みなさん、どのようなミッション、業務を担っていらっしゃいますか?
高橋様:我々が所属する総合メディアセンターは、電子計算機センター、図書館、教育工学センター、事務システム開発室の4つが融合した組織で、主にICTの基盤整備や、基幹ネットワーク等学園全体におけるあらゆるシステムの運用を担っています。ここで私は部長という立場で、本組織の統括を担当しています。
加藤様:私は、総合メディアセンターで企画・推進担当と運用担当がある中で運用側の課長を務めています。本学の東京千住キャンパス、埼玉鳩山キャンパス、そして東小金井にある中学校・高等学校のITサービス(ソフトウェアやPC教室管理)、視聴覚システムの運用を担当しています。
松本様:私も加藤と同様に、課員として同じ領域の運用を担当しています。
人間型のロボットからAIチャットボットへ
ー 図書館に設置していた人間型ロボットで、利用者の問い合わせ対応を実施していたコロナ前
高橋様:コロナが流行する前、もともと本学には東京千住キャンパス、埼玉鳩山キャンパス両方の図書館に人間型ロボットを設置していました。ロボットの胸のあたりにあるタッチパネルで簡単な質問に対応できるような機能があり、そちらを活用していました。非常にユニークな取り組みではあったのですが、コロナ禍に差し掛かり、図書館が開館できず利用するユーザが激減したこと、そんなご時世の中で皆が物理的に
タッチパネルを触ること等を考慮し、ロボットに代わる何かを探すようになりました。
また、図書館以外の問い合わせについては、①対面での窓口対応 ②電話 ③メール と計3つの受付チャネルがあり、対応をしていましたが、コロナ禍に入り、特にメールからの問い合わせが急激に増えました。特にオンライン授業関連の質問が一気に増加し、ある程度定型のものが多かったため、ここでも課題を感じていました。
そこで、当時本学の情報システム全般を担当いただいていた会社様に相談したところ、AIを使ったチャットボットを提案いただきました。ちょうどそのタイミングで、PKSHA Workplaceさんからご連絡もいただいていたので、話を聞いてみようとなったのが始まりでした。
5社で比較検討した結果、BEDORE Conversationに決定
ー AIを育成して日々回答精度を向上させていく構造
加藤様:初めてBEDORE ConversationのAIチャットボットを見た時の印象は、シンプルに「使いやすそう」でした。デモを見せてもらい、そこからどんな機能があるのか、AIの仕組みはどうなっているのかをお伺いした後、PoCの検証期間で実際に使ってみようとなりました。
BEDORE Conversationは学習機能があり、ユーザが使えば使うほど、AIが賢く成長していく仕組みを持っているので、初期状態である程度高い精度を確認できていたものの、これ以上に育っていくという点が魅力的でした。
ー メンテナンスしやすい画面構成と、更新のヒントになる機能が多数
加藤様:また、日々運用をしていく上で管理画面の構成も良かったです。分かりやすく、パッと見て利用状況が把握できるUIでもあるので、そこも決め手の一つでした。さらに、AIチャットボットを育てていく上で、具体的にどう改善したら良いかのヒントが得られる機能が充実しているので、迷うことなく更新作業ができそうと感じました。
チャットボットには、「この単語が質問されたらこのFAQを回答する」といった、前もってルールを登録しておくシナリオ型と呼ばれるものがあり、そちらの方が安価で導入できます。しかし、使われるチャットボットにするためには、様々な表記の揺らぎを理解し回答して、日々学習していくAI型が最適だと判断しました。
急増したシステム関連の質問にいつでも対応できる新窓口のリリース
ー 既存のナレッジを活用した、FAQデータをAIチャットボットへ搭載
加藤様:もともと本学は窓口対応で培ったFAQデータを持っており、今回の導入にあたって一から作成するという作業はなかったため、非常にスムーズでした。ただ、既存で保持していたFAQデータの中には比較的長文のものもあり、チャットボット仕様に手直しをしました。チャットボットのウィンドウのサイズ等を考慮すると、大体どのくらいの文章量(文字数)が望ましいのかアドバイスを受けて修正しましたね。最終的には、登録するFAQデータの数も増やし、250件程度で本リリースをしました。
あとは、チャットボットの自動応答で解決しない場合、問い合わせ先を直接記載するのか、問い合わせ方法が記載されたWebページに誘導するのか等、どんな動線設計にするのが良いか迷いました。
ー チューニング後、目に見えて賢く学習するAIを実感
加藤様:挙動確認の際、本学でよく使われる単語に対して正しい回答ができなかったことがありましたが、メンテナンスの一つである「チューニング作業」をしたところ、回答パターンが変わり、次から思った通りの回答を返すようになりました。この時改めて、AI学習機能の凄さとメンテナンスの重要性に気づきました。
ー 夜間の問い合わせへもタイムリーに対応できるメリット
加藤様:東京千住キャンパスの場合は、平日の6時限・7時限(18:10ー21:20)を中心に受講する工学部第二部の学生もいます。そのため、授業がある期間は22時近くまで窓口もオープンしており、職員も対応可能な状態にしています。
しかし、コロナで授業がオンライン化した当時は、メールや電話での問い合わせが多かったこともあり、窓口開設時間の短縮を行いました。メールの問い合わせ対応だと、どうしても返信が翌日以降になってしまい、タイムリーに返信するのが難しいので、24時間対応できるチャットボットは、導入当時から今日まで、特に夜の時間帯や休日に何か質問したいというユーザにとっては、とても便利なツールだと思います。
単純な問い合わせは大幅削減、実践したAIチャットボット利用率UPの施策
ー AIチャットボットで質問後、個別相談にくるケースも
松本様:AIチャットボットをリリース後の窓口、電話、メールで受ける問い合わせ内容を見ると、一問一答で回答できるような問い合わせは非常に少なくなりました。
ユーザがAIチャットボットを活用し、解決できない込み入った内容は直接問い合わせるという棲み分けが出来ており、適切な問合せフローが出来つつあると期待しています。
ー ユーザのリアルな状況を把握するツールとしてあらゆる面で活用
松本様:ユーザの利用ログが溜まるので、どの時期にどんな問い合わせが多いのか、ユーザがどんな質問の仕方をしてくるのかをすぐに確認できるのもありがたく、日々活用しています。
我々の認識と、ユーザが本当に聞きたいことにギャップがあることもあり、ログから新しい気づきを得られるのは大きいポイントです。この気づきをもとに、あらゆる場面でのユーザの満足度向上に繋げていければと考えています。
ー 施策により利用が月間600件 → 4,300件に急増
加藤様:チャットボットの利用率が低迷していた時、とある施策を実施したところ、翌月利用が7倍になりました。それが、チャットウィンドウの遅延表示です。
BEDORE Conversationの管理画面上で簡単に設定できるもので、AIチャットボットを設置しているページに15秒以上滞在すると、チャットウィンドウが自動で立ち上がるような設定をしました。
この施策のおかげで、チャットボットのユーザからの認知度が大幅に向上し、まず質問してみることで、使えるツールであることを認識してもらえたと感じています。
大学全体、中高へと段階的な展開を目指して
ー まずは大学内での横展開と定着化を図り、ゆくゆくは中高へも広げ学園全体での問い合わせの自動化へ
高橋様:認知度向上のために、もっと周知をしていく必要性を感じています。チャットボットでカバーできる範囲が広がると、その分認知度や利用率も上がるので、今はまだ総合メディアセンターのみの利用ですが、どんどん横展開していきたいですね。現状すでにチャットボットを導入したいという声が複数部署から上がっており、これから導入を進めていくことも決定しています。この波が学内、学園全体に広がり、新しい問い合わせフローが構築されればと考えています。
また、まだ構想の段階ではありますが、LINEとも連携ができるようなので、今後LINEからAIチャットボットを利用し、希望者はそのままLINE上で担当者とやりとりができるような未来になれば嬉しいです。ほとんどの学生がLINEを利用しているので、そこに設置ができれば、より利便性も高まるかと考えています。
ー ペーパーレス化の推進、AIチャットボットがどう寄与していくか
加藤様:授業のオンライン化に伴いペーパーレスも進めることになり、特に学生の課題提出を電子化しようという取り組みがあります。そこで初めてLMS(学習管理システム)を触る先生方も多く、LMS関連の問い合わせも多数ありました。今後は、LMS関連のFAQを拡充し、さらに、AIチャットボットを活用して課題提出や提出状況の管理ができるようになればいいと考えています。
最後に一言お願いいたします
導入にあたっては、PKSHA Workplace社様のサポートをいただき週1回のPoC定例会を開催することによって、FAQデータの登録等の作業や設定も迷いなくできたと感じています。
今後は、チューニングをこまめにすることにより、もっとユーザが使いやすく管理者もユーザのニーズに寄り添うことができるようにツールを成長させるとともに、全学的な導入に向けて進めていきたいと考えています。
以上、ありがとうございました。